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岩波昭彦 いわなみ　あきひこ

日本の歴史を重ねた荘厳で美しい木造建築と共に、ニューヨークの直線と曲線で造られたアールデコ様式のエンパイア・ステート・ビルやクライスラー・ビルなど摩天楼の美しさはとても文章では言い表せません。マンハッタンで好きな場所は？と問われれば、初めて訪れた「トップ・オブ・ザ・ロック」というマンハッタン島はもとよりニュージャージー州まで望めるロックフェラー・センターの展望台と、映画「めぐり逢い」の舞台になったエンパイア・ステート・ビルの展望台です。特に摩天楼の夜景の美しさは幾千もの宝石をちりばめた様です。
初めてニューヨークを訪れてから幾度となく繰り返し訪れましたが、その感動は今でも少しの変りもありません。今は大変綺麗になった地下鉄には乗りますが、取材はいつも徒歩が中心です。本当に感動する、この場所からの風景を絶対に描き残したいと思う所を見つけるまで歩き続けます。そしてその感動を心にとどめるように写生をします。また、俯瞰した構図が必要な時は、ヘリコプターに乗って取材をすることもあります。私をニューヨークに向かわせたのは都市の美しさや憧れだけではなく、世界で最も厳しいアートの発信地で失敗を恐れず、誰も見たことがない国境を越えた新しい日本画に挑戦したいという強い気持ちからです。
世界の政治や経済、文化の中心地で猛烈に競い合う都市の息吹やエネルギーと、いずれ次代へ消え去ってゆくはかない面も併せ持つ都市像を、日本画の素材を使って表現し続けたいと思っています。
源氏物語絵巻が描かれた当時もその時が“現代”であったように、“現代”を映す鏡として、感動と共に記録としても残してゆきたいと思います。　岩波昭彦