竹久夢二作品の査定・評価のポイント
竹久夢二の作品の査定や評価の際、査定士が確認しているポイントについて解説します。査定価格には、作品の芸術的価値や市場での需要はもちろんのこと、年代や保存状態といった様々な要素が影響しています。
1. 作品の種類
竹久夢二の作品は掛軸などの美術品の他にポスターや挿絵など様々な技法・形式で存在しています。その中でも作家本人が手描きした肉筆画(=原画・本画)が最も評価が高いです。
2. 作品のテーマや図柄
竹久夢二の作品の中で「美人画」が最も人気があり、評価も高い傾向にあります。特に「夢二式美人」として知られる竹久夢二ならではのスタイルが感じられる作品は、高値で取引されることが多いです。
3. 作品の状態
作品の保存状態は査定に大きく影響します。具体的には紙や顔料などの劣化・シミ・変色・破れ・折れなどの損傷がある場合に変わってきます。竹久夢二の作品は紙に描かれているものが多く特に経年劣化が生じやすいため、保存状態の良し悪しは査定士が注意深く確認しているポイントの一つです。
また修復が行われている場合、その修復の質や範囲も評価に影響します。過剰な修復や不適切な手入れが行われていると、評価が下がる可能性があります。
4. サインの有無
竹久夢二作品に関わらず、美術品における作家サインの有無は、作品の価値を決定する上で重要な要素です。同一作家の作品であってもサインがある作品の方が、買い手はより信頼感と安心感を感じることができます。よってサインなしの作品は相対的に取引価格が低くなる傾向にあります。また竹久夢二はサインによって制作時期の特定が可能なため、その判断要素としてもサインの有無は重要です。
5. 作品の年代
竹久夢二の作品で市場価値が高い年代は、大正時代から昭和初期のものが挙げられます。この時期は、画業と絵葉書・ポスター・装丁デザインなどの商業デザインの活動が最も充実していた時代であり、竹久夢二独自の「夢二式美人」が確率された時期でもあります。
上記の時代の中でも特に1910年代後半から1920年代中盤は、商業デザインの仕事に追われながらも作品制作に力を注いだ時期でもあります。この頃の作品は、竹久夢二らしさ溢れる美意識が色濃く反映されています。
竹久夢二作品の最大の魅力「夢二式美人」とは?
竹久夢二作品が没後100年近く経った今でも多くの人から評価され、安定した市場価格で取引されているということは、作品に確固たる魅力があることの証明でもあります。竹久夢二作品の中で最も評価を得ているのは「夢二式美人」が描かれている作品です。以下ではその「夢二式美人」の魅力と、どのようなところが高い評価を得ているのかを説明します。
1. 美人画「夢二式美人」の特徴
竹久夢二の美人画は、大正時代の女性像を象徴するもので、「夢二式美人」として知られています。このスタイルの美人画は、以下の特徴を持っています。
華奢でしなやかな体型:儚さや危うさが垣間見えるほっそりとした身体が特徴です。
憂いを帯びた表情:女性たちはどこか物悲しさや寂しさを感じさせる表情で描かれています。
控えめで繊細な色彩:柔らかな色合いと繊細な線描が特徴で、その全体のソフトな仕上がりからは上品で落ち着いた雰囲気が漂っています。
長い首や顔のデフォルメ:女性たちの首は長く描かれ、顔の形はやや細長く、またデフォルメが施されています。これは彼の持っていた美意識を反映しており、作品に独自の雰囲気を与えています。
2. 和と洋の融合
竹久夢二の美人画は、日本の浮世絵や美人画の流れを汲みながら、西洋的なデッサン技法やアール・ヌーヴォーの影響を受けています。構図、線描、情緒的な感性の表現からは伝統的な日本美術の技法や美意識を感じさせます。一方で大正時代のモダンな女性像とポスターアートからの影響、そして西洋的なデザイン感覚が取り入れられていることにより「和」と「洋」が絶妙に融合させられているのです。この和洋折衷のスタイルは、大正時代の文化的な背景とも合致し、夢二の作品に新鮮な魅力を与えています。
3. 詩的で感傷的なテーマ
竹久夢二の図柄はしばしば詩的で、感傷的な雰囲気を持っています。特に、代表作「宵待草」に象徴されるような物悲しさや切なさを感じさせる作品が多く、そこには日本的な「もののあはれ」の感情が色濃く反映されています。どこか儚げで感傷的な雰囲気をまとい、現実の女性というよりも理想化された詩的な存在を思わせます。また、大正時代の都市文化やロマンティシズムの象徴とされており、当時のモダンガールや自由な女性像を反映しながらも、伝統的な日本の美意識を表現しています。
査定における鑑定証書の重要性とは
お客様がお持ちの竹久夢二作品を査定に出される際、鑑定証書の有無は非常に重要な要素です。鑑定証書とはその作品が本物であることを所定の鑑定機関が証明・発行する公式な文書であり、作品の取引や評価において重要な役割を果たします。
鑑定証書の有無は査定価格に影響してきます。具体的には鑑定証書がある作品の場合は、真贋を確認するステップが省かれるため、作品への信頼性が高く相場に準じた安定した査定価格になります。一方で鑑定証書がない場合は、贋作の可能性や買取後の鑑定費用が考慮されるため査定価格が低くなる傾向にあります。
なお、鑑定証書をお持ちでない場合でも査定は可能です。作品によっては鑑定にかかる費用が作品の査定価格よりも上回るため、鑑定証書を取得しない方が良い場合もございます。そのような事態を避けるために、一度作品を美術商に見てもらい、鑑定取得の要否をアドバイスしてもらうのが良いでしょう。
花田美術では竹久夢二作品の鑑定代行を無料で行っております。鑑定のことでご質問やお困りのこと、不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
査定時の作品の保存状態のチェックポイントとは
竹久夢二の作品の多くは紙や絹に描かれる作品がほとんどです。査定士が保存状態を確認する際、以下5つのポイントを見ています。
① シミ・カビ : 画面上にあるポツポツと茶色いシミや、白いカビなどのことです。シミやカビは修復は可能ですが費用がかなりかかるため、査定価格に大きく影響します。湿気の多い場所に保管されていたり、作品を壁に掛けていても風通しの良くないところで保管していると発生しやすくなります。
② 焼け: 作品全体の色が変わっている状態です。日光や蛍光灯などの紫外線により、作品の地となる紙や絹などが変色を起こすことです。額から外して確認した時に顕著に分かります。
③ 剥落: 作品の絵の具である顔料が画面上から剥がれてしまっていることを指します。作品のメインとなる場所(顔や描き込みの多い場所など)に剥落が見られる場合は、査定価格に影響があります。原因は経年劣化からくるものがほとんどです。
④ 割れ: 剥落まではいかず、作品の画面上にヒビが入っていたり、割れが入っている状態のことを指します。この場合も度合いにより、査定価格に影響があります。
⑤ 折れ: 作品自体が折れてしまっていることを指します。全体的に折れが出てしまっているものの場合は、査定価格に影響が出ます。軸の作品では度々みられることが多いですが、巻き上げる際に誤って折れてしまうことが多くあります。
作品査定は1点からでも可能です
以前お客様からのお電話で、「査定の作品数が1点だけでは申し訳なくて…」といったお声がございました。花田美術では作品の査定及び買取は1点からでもお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
お問い合わせの方法は、お電話(03-3289-0668)やメール(info@hanada.gallery)宛てにご連絡いただけましたら、それぞれのお客様にあったベストな方法をご案内・ご提案させていただきます。
竹久夢二の作品査定は、お気軽に花田美術までお問い合わせください
花田美術は竹久夢二の作品を専門に取り扱い、40年以上の豊富な実績を誇ります。
会長や社長が直接作品を拝見し、専門的な視点から適切なアドバイスをいたします。また、全スタッフがお客様のご相談に真摯に対応し、安心していただけるようなご案内を心掛けています。
査定価格はもちろんお客様一人一人に合わせてどのような方法で買取をするかなど、売却のご相談に乗りながら進めていくことが可能です。
竹久夢二の作品に関するご相談は、お気軽にお電話やフォーム等でお問い合わせください。
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