横山大観の本物を見極める!真贋のポイントと市場価値

横山大観の作品の特徴とは 〜本物であるかどうか、真贋のポイントについて〜

横山大観は明治から昭和にかけて活躍した日本画の巨匠であり、その生涯を通じて日本画の革新と伝統の融合に取り組み多くの名作を残しました。

そのため、市場には本物の作品だけでなく贋物も多く流通しています。本コラムでは横山大観の本物の作品を見極める際のポイントを解説するとともに、売却する際の気をつけるべきポイントについても紹介します。

真贋判定のポイント① 横山大観作品の特徴である「朦朧体」の表現

横山大観の作品の中で代表的な表現技法の中に「朦朧体」の表現があります。これは輪郭線を明確にせず、色彩の濃淡やぼかしを活用することで描写対象を描く技法です。本物の作品の筆致は非常に柔らかく、自然なグラデーションが特徴的です。この技法により、富士山をはじめとして日本風景の神秘性や霊的な側面といった横山大観作品らしい作風を引き出しています。一方、贋物ではこのぼかしや筆運びが不自然で、作品全体からは硬い印象を受けることが多く、専門家はその違いを明確に見抜きます。

真贋判定のポイント② 落款と印

横山大観の落款や印は、作品や制作された年代ごとに変化がみられます。落款や印に違和感がないか、そして作風と制作年代が一致しているかどうか、制作年代と落款が一致しているかどうかなど、そういった点で本物の作品かどうかを見定めることができます。

落款は大きく区分して9つ存在しています。

  1. 秀麿落款
  2. 初期落款
  3. 針金落款
  4. 手敬落款
  5. 楷書体落款
  6. 行草体落款
  7. 行書体落款
  8. 抜け落款
  9. 晩年落款

次に印も「可笑」「秀麿」「鉦鼓洞」「鉦鼓洞主」「鉦鼓洞主人」「趁無窮」「臣横山秀麿」「大観」など、複数の印を使い分けています。本物(真作)の押印、印の彫りが深く鮮明であり、かすれ具合にも自然な風格があります。

昭和22年落款

真贋判定のポイント③ 紙本・絹本の質

作品に使用されている紙本や絹本の質は、本物の作品を見分ける際の重要なポイントです。

横山大観作品は上質な和紙や絹に描かれることが多く、安価な素材に描かれた作品と比べると、顔料や墨の発色の美しさ、色の深みや透明感が格段に優れています。

また、質の高い紙や絹は絵具がしっかりと定着するため、時間が経っても色が美しく保たれます。一方、安価な素材では経年劣化が早く、色のくすみや剥がれが起こりやすいため、本物と贋物の違いがはっきりと現れます。

横山大観の作品の査定ポイントについて

美術品というものは、同じ作家の作品で同じような作品であったとしても、1点1点それぞれの作品で査定が異なります。横山大観の作品に関しても同様に、各作品の図柄や出来や技法、コンディションや鑑定登録の有無など、様々な要素により査定額が変わります。例え同じモチーフ、同じサイズだったとしても一概にいくらと明言できないところが、美術品の難しいところです。

以下では、実際に美術商が査定の際に確認している事項について、横山大観作品ならではのポイントも交えながらご説明します。

人気のある図柄かどうか

横山大観の作品というと、どのような作品を思い浮かべられるでしょうか?恐らく多くの方が気高く雄大で霊峰の神秘を映す「富士」や静かな海原に真赤に輝く朝日が昇る情景を描いた「海暾(かいとん)」といった縁起の良い風景画が脳裏に浮かんだことと思います。

「海暾」天童市美術館所蔵

これはどの作家に関しても言えることですが、作家名を聞いてすぐに紐づくような図柄は人気が高く、その人気に比例して値段も高くなる傾向にあります。横山大観が生涯で描き上げた富士作品の点数は1,500点にも上るといいます。ただ、富士の作品と一口にいってもその1,500点が全て同じような値段ということではなく、作品の持つ様々な要素によって値段が異なってまいります。

鑑定登録がある

横山大観作品にかぎらず美術品の査定において、「鑑定登録」の有無は極めて重要な要素です。鑑定登録は、その作品が本物であることを裏付ける一つの指標となり、美術市場において高い信頼を得ることができます。

特に新たに作品を購入したいと思っている方にとっては、鑑定登録の有無が購入判断に直結します。信頼性が担保された作品であることは、安心感を与えるだけでなく、市場での価値を高める要因にもなります。そのため、美術商は作品を買い取る際、必ず鑑定登録の有無を確認することが一般的です。

横山大観の作品の場合、横山大観記念館(公式ウェブサイト)が所定鑑定機関として鑑定を行っています。なお花田美術では、作品の売却査定をご希望されるお客様に対し鑑定代行サービスも承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。

人気の高いモチーフや出来が良いかどうか

同じモチーフの作品だとしても、個々の作品により評価が大きく異なるということについて、特に作品の出来やコンディションが最も影響してくるといっても過言ではありません。

横山大観 霊峰富士

評価が高くなる傾向にある作品のポイントは以下です。

①「朦朧体」の表現が見られるかどうか

横山大観の代表的な技法として「朦朧体」という表現方法があります。絵の中で輪郭線を明確にせず、柔らかい色味のぼかしで構成される技法で、神秘的で幻想的な雰囲気を醸し出します。この表現で描かれた富士山をはじめとした風景画は静謐で詩的な美しさを持ち、高い人気があります。

②霊峰としての荘厳な構図であるか

横山大観は、代表作「霊峰不二」をはじめ、富士山を題材にした作品を数多く制作しました。横山大観の富士山作品は、日本画の伝統と彼自身の革新的な技法が融合したものであり、その荘厳さと威厳が高く評価されています。

富士山は日本文化の象徴的存在として、古来より多くの芸術家に愛されてきました。その完璧な円錐形や四季折々の移ろいゆく表情は、日本の自然美を象徴するモチーフとして非常に人気があります。また、縁起の良さでも知られ、「一富士二鷹三茄子」に代表されるように、幸福や繁栄を象徴する存在として日本人の生活や心に深く根付いています。

横山大観の作品と、日本画を代表するモチーフである富士山の組み合わせは、日本画愛好家やコレクターにとって極めて魅力的なものです。大観は自身の代表的技法である「朦朧体」を駆使し、富士山の神秘性や霊的な側面を引き出すことで、日本画の新たな境地を切り開きました。このような要素が結びついた横山大観の描く富士山は、単なる風景画ではなく、日本文化や精神性そのものを体現する芸術作品としての価値を持っています。

上記2点のポイントを踏まえると、横山大観が描く朦朧体の表現が見られる富士山作品は美術市場において高い需要を誇り、その希少性と芸術的価値からも、コレクターにとって重要な収集対象となっています。

来歴がある、図録等の所載物がある

横山大観に限らず、美術品を売却する際にその価値を左右する重要な要素の一つとして「来歴(プロヴェナンス)」と「所載物の有無」が挙げられます。これらの情報が明確であればあるほど、作品の信頼性が高まり、市場での評価や取引される値段にも大きく影響します。

まず来歴(プロヴェナンス)とは、その美術品が過去にどのような所有者のもとを経てきたのかを示す履歴のことです。例えば、有名なコレクターや美術館、画商を通じた作品であれば、その真贋の信頼性が増します。反対に来歴が不明な作品は、いかにその作品が優れたものであっても市場での評価が下がる傾向にあります。

具体的に、来歴を証明するものとしては以下のような資料が挙げられます。

・画廊・オークションハウスの販売証明書

・過去の展覧会の出品記録

・旧所有者(著名なコレクターなど)の購入記録

・作品に関する古い写真や手紙

次に所載物とは、作家の画集やカタログレゾネ、展覧会図録などのことを指します。特に、カタログレゾネ(作家の作品を網羅的に収録した資料)に掲載されている作品は、本物であるという真正性が高く評価され、取引の値段も上がる傾向にあります。

横山大観の作品売却の際に気を付けておきたいポイント

横山大観の作品を売却する際に、お客様ご自身で特に注意していただきたいのは、買取を依頼する美術商の信頼性です。

もちろん、鑑定証書の有無や来歴などの詳細な情報は多ければ多いほど評価が高まります。 しかし、それと同じくらい重要なのが、適正な価格で取引し、誠実な対応をしてくれる美術商を選ぶことです。

複数の美術商に査定を依頼する場合

美術品の買取を依頼する際、一社だけでなく複数の美術商に査定を依頼される方も多いかと思います。美術商ごとに査定基準や作品に対する見解、販売ルートなどが異なるため、提示される査定額に差が出ることがありますし、またお客様と美術商との相性を見極めるという意味でも、複数社に問い合わせることは有効な手段と言えます。

しかし、あまりに多くの美術商に査定を依頼してしまうと、美術業界内でその作品が査定に出されている事実や、売り物として広く出まわっているような印象をあたえてしまう可能性があり、そういった事で「市場に出回った作品」とみなされ、その結果、新鮮さが失われ買取価格が下がってしまうケースも少なくありません。査定を依頼する美術商を適切に選定し慎重に進めることが、より良い条件で買取を成立させるポイントとなります。

美術商の選定については、事前に以下のような方法で信頼性を確認すると良いでしょう。

・ホームページやSNSで美術商の雰囲気や実績を確認する

・美術商が開催する展覧会に足を運び、実際の活動を知る

買取時のチェックポイント

買取を依頼する際には、相場や鑑定証書の有無、修復の必要性などについて具体的な質問をしてみてください。 その際、誠実かつ専門的な対応ができるかどうかを確認することが重要です。

特に、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

・適正な市場価格を提示しているか

・鑑定証書や所載物の重要性について十分な知識を持っているか

・修復や保存状態について的確なアドバイスができるか

最終的には「信頼できるか」を見極める

美術品の売却において最も大切なのは、信頼できる美術商を選ぶことです。美術品の真価を正しく見極め、適正な査定額を導き出すには、豊富な知識と経験が欠かせません。優れた美術商は、真贋の判断や保存状態の評価、そして作品にふさわしい販売ルートの選定まで、一貫した丁寧な対応でお客様にとって最も有利な形で売却をサポートします。一方で、知識や誠意を欠く業者に依頼してしまうと、本来の価値よりも低い価格で手放してしまう可能性も否定できません。

そして何より重要なのは、美術商の対応が誠実であり、お客様ご自身との相性が良いということです。お客様の大切な美術品を安心して託すためにも、どのようなご相談にも真摯に向き合い、丁寧に対応してくれる美術商を選ぶことをおすすめいたします。

横山大観作品の売却なら、40年以上の実績を持つ花田美術へ

花田美術は1983年の創業以来、40年以上にわたり横山大観の作品を取り扱ってまいりました。私たちは公開オークションだけでなく、美術商の業者間オークションにも年間150回以上出席しており、これまで数多くの横山大観作品を拝見してきました。そのため、横山大観作品の真贋を見極めることには自信を持っております。

所定鑑定機関に出される前に、まずは弊社にご相談いただければ、鑑定に出すべきかどうかの判断を含め、適切なアドバイスをさせていただきます。花田美術ではお客様の横山大観作品の特性を見極め、ご希望に沿った最適なご提案をいたします。

お問い合わせは、メール・お電話・郵送など、お客様にとって便利な方法をお選びください。長年の経験と知識を生かし、丁寧にサポートいたします。お気軽にご相談ください。

株式会社 花田美術

東京都中央区銀座6-3-7 アオキタワー1F

昭和58年創業、東京美術倶楽部(東京美術商協同組合)所属

電話番号 03-3289-0668

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