第16回二科展に≪Declaration(超現実派風の散歩)≫の題で出品された。フランス語declarationは、宣言、告白、表示などの意がある。「超現実派の中に含まれている時間、空間、nostalgieなどを1番鋭敏に感じる。理論は嫌いだがただ純粋にそれだけを摘出してみたい。―――白と憂鬱な空色とのコントラストがこの絵を支配している…」と解説があり、この年から1930年代後半にかけて感覚的に超現実派、シュルレアリスムの上を散歩して、翌年から1932年までに3点の同系統作品を発表した。
心中未遂事件の年の作である。19歳の娘に一緒に死にたいといわれ、31歳の妻子ある男が心中をはかる。留学中貧乏のどん底を経験し、それでも絵を描き続けた男がである。帰国後の憂鬱、かなわぬ恋、シュルレアリスムの散歩時代は東郷にとって苦しい時期であった。原題は超現実派の宣言というより、引き離された恋人への愛の告白と考えたい。この作品が東郷の当時の心象風景であり、精神的自画像と感じるからである。